「徳川家康公追善法要差定 令和蘭奢待献香式」へ参列いたしました。
大本山増上寺(東京・港区)にて、5月28日、伝説の天下第一の名香“蘭奢待”が歴史上初めて公の場で炷き上げられるということで、全国から約600名の参加者が集まりました。
蘭奢待/蘭麝待(らんじゃたい)は、東大寺正倉院に収蔵されている香木。天下第一の名香と謳われる。正倉院宝物目録での名は黄熟香(おうじゅくこう)で、「蘭奢待」という名は、その文字の中に"東・大・寺"の名を隠した雅称である。その香は「古めきしずか」と言われる。紅沈香と並び、権力者にとって重宝された。ウィキペディア(Wikipedia)より
室町時代には足利義政が、安土桃山時代には織田信長が、また近代には明治天皇がその一部を截(き)り取っています。長さ156センチ、重さ11.6キログラムという日本の宝の香木です。
徳川御三家当主(徳川宗家、尾張徳川家、水戸徳川家)を始め神社仏閣のご当主他、多くのご来賓(来年の大河で家康を演じる松本潤さんや片岡鶴太郎さん、GLAYのテルさん、倍賞美恵子夫妻のお顔も)、そして一般参列者の見守る中、宝生流宗家 宝生和英さまの仕舞いと、人間国宝の野村萬 さまの謡の奉納から式がはじまり、気持ちが昂りました。
そして奏楽(お寺で雅楽という組み合わせにも感動でした)と読経から蘭奢待の献香へ。
志野流香道二十世家元蜂谷宗玄宗匠、若宗匠の御点前で厳かに献じられました。
足利義政が截り取り、さらにその一部を志野流の祖・志野宗信が賜ったという香木。室町時代から大切に伝わってきた名香中の名香を炷くことは、「この身を切る思い」と宗玄宗匠が吐露されるほど稀有なことです。
一生に一度、いえ!一度でも機会に恵まれたことが信じられない蘭奢待の香り。時代の天下人だけが香りを知っている、何百年も前に聞いたかもしれない同じ香り…。
本堂はとても広いので香りはハッキリとは届きませんでしたが、お家元が蘭奢待を銀葉(香炉)に置かれた瞬間、場の空気が変わり、1300年の悠久の時を超えて蘭奢待がここに目覚めたように感じました。その瞬間に同じ空間にいられただけで感慨深く、幸せを感じました。いえ、正直、興奮しました(笑)
激動の時代を迎えた今、日本から世界に向けて散華のように芳香を降り注がせたいという願いから行われた、人々の安寧と幸せを祈る特別な儀式。
厳かな儀式の場面は、香に携わったご縁で参列出来た私の胸にしっかり刻まれました。