ヘリオトロープ(木立瑠璃草)

少しずつ香房の庭が整理できてきました。ヘリオトロープが可憐に咲いています。小さな花が寄り添うように集まり、やさしい香りを漂わせています。

ヘリオトロープは、日本では「香水草」や「匂ひ紫」と呼ばれる香り高い花です。原産地ペルーでは「愛の薬草」、ドイツでは「神の薬草」、フランスでは「恋の草」とも呼ばれ、古くから人々に愛されてきました。

かつて南フランスでは天然精油も採られていましたが、その香りの儚さゆえに、やがてヘリオトロープを思わせる有機化合物香料「ヘリオトロピン」が誕生し、香水文化を支える存在となりました。アーモンドやチェリー、バニラを思わせる柔らかな甘さを持つヘリオトロピンは、今でも多くの香水に使われていますし、お香作りのパーツとしても使用されてきました。

ヘリオトロープといえば、夏目漱石の『三四郎』に登場する有名な場面を思い出します。
物語の終盤、美禰子はハンカチに香りをまとわせ、三四郎の前に差し出します。
そして静かに「ヘリオトロープ」と告げるのです。

言葉はわずかです。たった一つの香りが、語り尽くせない想いを伝える。
物語では二人の過去や想い出を一瞬で呼び覚ます象徴として描かれています。

香りは不思議です。何年経っても記憶の中で生き続け、ある日突然、遠い日の感情を連れて戻ってきます。
言葉より深く。
沈黙より雄弁に。
香りはいつもそうですね。

明治という時代は、西洋文化が急速に日本へ流れ込んだ時代。
それまで日本ではお香の「薫じる香り」が中心でしたが、文明開化によって香水が広まり始めます。日本ではじめて輸入・市販された香水は、フランスのロジェ・ガレ社の「ヘリオトロープ・ブラン」。
『三四郎』にヘリオトロープの香水が登場することからも、その時代の空気を感じ取ることができます。

漱石は何故、ヘリオトロープを選んだのか。何故、バイオレットやバラではなかったのか。好きな人がヘリオトロープをつけていたのか。イギリス留学中に発見した感動の香りだったのでしょうか…。

咲き満ちる花々に、香りの歴史と人の感性の豊かさを感じる初夏のひとときです。

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3日(水)10:00〜 お線香作り(残5名様)
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17日(水)13:00~ 塗香作り(残5名様)
23日(火)午前、午後
25日(木)13:00~ 塗香作り(残5名様)
29日(月)午前、午後
30日(火)午前、午後

🍀7月香習会の空き状況
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